今回は棚卸資産の評価方法についてです。
おそらくほとんどの企業(中小企業は大部分)が自社の棚卸資産の期末評価方法に「最終仕入原価法による原価法」を採用していると思います(気になる場合は自社の決算書に添付された個別注記表を見てください)。
ただ、実務上たまに「最終仕入原価法による低価法」と記載のある注記表を見ることがあります。
一方で「最終仕入原価法による原価法に基づく低価法」と記載のある注記表もあります。
今回は、この「最終仕入原価法による低価法」と「最終仕入原価法による原価法に基づく低価法」の違いについて解説していきます。
表現としてはほとんど変わらないように見えるこの2つですが、実は片方は間違った表現になります。
結論:「最終仕入原価法による低価法」という表現は間違っている!
実は、「最終仕入原価法による低価法」という表現は税務会計的に誤った表現になります。
もっと言えば、このような表現で示される評価方法など存在しません。
この点についてここから詳しく解説していきます。
棚卸資産の評価方法
まず簡単に棚卸資産の評価方法について確認ですが、棚卸資産の評価は基本的に「原価法」が採用されていることが多いです。
「原価法」とはその参考とする原価によって以下の6つの方法に分けられます。
- 個別法
- 先入先出法
- 総平均法
- 移動平均法
- 最終仕入原価法
- 売価還元法
1つ1つの計算方法については割愛しますが、企業はこの6つの評価方法から好きなもの(企業の実情にマッチしたもの)を選択することができます。
ただし選択には届出書を提出する必要があり、なにもしなければ最終仕入原価法が選択されます。
このため多くの企業で「最終仕入原価法による原価法」が選択されています。
選択されている、というか何も選択していないために自動的に採用されているという表現が正しいでしょうか。
低価法って何?
では、同じく棚卸資産の評価方法である「低価法」とはどういう評価方法を示すのでしょうか?
「低価法」とは、上記原価法で計算した棚卸資産の原価よりもその棚卸資産の時価が低いときは、評価額として時価を採用するという評価方法になります。
つまり、買った値段よりも高値で売ることができないのであれば、その売価がその棚卸資産の今の価値だよね?ということです。
ちなみにこの低価法での評価方法を採用したい場合も、事前に届出書を提出する必要があります。
低価法は原価法ありきの評価方法
以上のことを図で簡単に表すと以下のようになります。

つまり、低価法とはあくまで原価法という前提がなければ成り立たない評価方法ですので、「最終仕入原価法による原価法に基づく低価法」という表現をしなければならないわけです。
最終仕入原価法というのは原価法の評価方法ですので、「最終仕入原価法による低価法」という表現がおかしいことがわかりますね。
まとめ
今回は棚卸資産の評価方法である原価法と低価法の表現について解説してみました。
細かいことかもしれませんが意外と知られていない部分でしたので参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。